2030年06月01日

ようこそ【星屑ひとつ】へ

ゆきのの拙いお話を連日UPしています。
私好みのストーリーやら設定ばかりですが、面白楽しく書いた作品です。多少、いや、かなり突っ込みどころがあるかと思いますが、そこは温かい目で読んで下さいね^^



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2020年07月12日

【恋愛小説】好きにならなければ良かったのに32

 真実を知りたい気持ちが膨らみながらも、美幸が一番聞きたくて聞きたくない話を聞かされたかも知れない。妻がいるのに愛人を囲っているという事実を他の社員も知ってるとは、少し意外に感じると佐々木同様驚きでその場は黙りこんでいる。

 けれど、昼間の様子から多少は予想はついていた。予想はついていたとしても、それを他人の口からそれも会社の社員からそんな話を聞かされるとは思わなく、正直ここでは戸惑いの方が大きかった。社内での情報を知りたいと自ら相田を誘ったのに、呆れるほどに矛盾している。

 暫く沈黙が続いたかと思うと重い口を開けたのは佐々木だった。

「それでよく他の社員が黙っていますね。それに、普通はそんな不倫関係って嫌うから同じ職場には居ずらくないんですか?」
「佐々木、それはな本当の愛人関係ならそうさ。だけど、これには話の続きがあるんだよ」

 吉富が話を続けることに戸田も相田も黙ってその話を聞いていた。内容が内容なだけに神妙な面持ちでいると、美幸の表情も固くなっている。

「これは去年光彦が見たから分かったことなんだが。あ、光彦とはコイツのことね」

 そう言いながら戸田を指さした吉富。戸田は吉富に指名されると何度か頷いている。「オレ、見たんだよね」と言うと、その見たという現場の話を吉富が説明を続ける。

「どうやら光彦が聴いた話を整理すると、課長と日下は元々恋人同士なのに、課長がその恋人を裏切って他の女と結婚したようなんだよ。その痴話喧嘩を光彦が見たってことさ」

 美幸はハッと顔を上げて吉富の話を食い入るように聞いていた。会社で他の社員に気付かれるような痴話喧嘩をあの二人もするのだろうかと。愛し合っている二人なのに、何故そんな喧嘩をしたのか、その喧嘩の内容が気になってしまう。

「あの、その痴話喧嘩っていったいどんな喧嘩なんですか?」
「さあ、どうだろうね」
「課長相手に問題起こすと会社に居難くなるしね、この話題は俺達の胸の中に仕舞っておくのが一番だと思うよ、ね、吉富さん」
「そうだな、これ以上の詮索はしない方が身の為さ」

 一見チャラそうに見える吉富なのに、女性社員相手に名前をちゃん付けで呼ぶくせに、こんな時は真面目なサラリーマンと言う表情を見せる。ちょっと意外な吉富の態度だった。

2020年07月11日

【恋愛小説】好きにならなければ良かったのに31

 もともと幸司からは晴海を恋人だと言われた。それも、幸せに満ちていた新婚旅行から帰ってきたその日に。
 あの時は奈落の底へ突き落とされるのかと、悲しみに明け暮れていた。そんな辛い思いをした日から既に四年が過ぎていた。

 会社の後継者になる条件だからと、幸司は結婚を決めたと平然と話すし普通に結婚生活を続ける。しかし、愛し合う結婚をしたと思い込んでいた美幸には、その結婚生活を幸司の様に平然と送ることなど出来ない。

 もう苦痛としか思えない四年間だった。でも、だからと、この会社で働く自分の父親の為にも離婚したいとは言い出せなかったし、それに、幸司が好きだったからそばにいたかった。

 もしかしたらと、長く一緒に居ることで気持ちに変化があればと期待していたが、今のこの雰囲気からそれも難しいように感じてしまった。

「恋人ですか?! うわぁ、聞いてて良かった」
「それが恋人ならな、ですよね吉富さん」

 大きな溜め息を吐く戸田に相田も相槌を打っている。そんな二人を見て佐々木が不思議な顔をしている。

 美幸は何となくこの雰囲気がどういうものかを感じ取れた。しかし、新人の佐々木には意味がわからず戸田に食いついて訊くと…

「恋人なら依怙贔屓したくなるのも分からなくはないですけどね」
「恋人ならな。けどな、課長には奥さんがいるんだよ」

 吉富の口から意外な言葉が出てきた。戸田も相田も吉富のセリフに頷いているのを見ると、どうやら職場では幸司は結婚し妻がいると分かっているようだ。

「じゃあ、愛人ってヤツですか?!」
「バカッ、誰が聞いてるか分からないだろう?、 大きな声で言うんじゃない」

 戸田が慌てて佐々木の口を手で塞ごうとすると、吉富が右手でNOと言いたげに横に手を振る。

「もう社内では周知のことだ。隠しても直ぐにバレるさ。知らないのは当人だけだろう」
「一番可哀想なのは奥様だわ。あんな女の何処が良いのか課長の気が知れないわ!」

 明るく愉しく飲んでいた筈の歓迎会だが、一変して葬式のような暗い雰囲気になってしまった。そして、この歓迎会の席に新人として座る美幸が幸司の妻だと誰も知っている者はいない。


2020年07月10日

【恋愛小説】好きにならなければ良かったのに30

 ところが、いざ、『歓迎会』が始まると吉富も戸田も実に相田以上に言いたい放題で、人が訊かない事まで喋りまくる始末。誰もそこまでの情報は欲しくないと思いながらも聞いていた。

「日下さんって、そんなに仕事ができるの?って言いたい時もあるのよね」

 自分は日頃ミスが多いと言うも、晴海が課長の事務補助をするほど有能なのかと疑問を持っているようだ。そんな文句が一度ならず二度三度と出てくる。

 すると、それを聞いた戸田も同じ様なセリフを返す。

「ああ、オレも思うときあるなぁ。この前なんて相田さんがまとめ上げた資料の方が絶対に顧客に受けると思ったのに、パッとしない日下さんのを採用したろう? あれには、ちょっと課長にも幻滅したなぁ。吉富さんもそう思いませんでした?」
「課長は日下さんを依怙贔屓してるんですか?」

 戸田が不満そうに言うと新人の佐々木は何も知らずにそう聞き返す。すると、吉富の顔を見た戸田は気まずそうな顔をしながら肩をすくめた。

「晴海ちゃんはね、あ、日下の事だけどね、あの子は特別なんだよ。課長にとっては」

 戸田に代わって説明を始める吉富の表情は冴えない。飲んでいたビールのジョッキをテーブルに置くと、さっきまでのふざけた顔をしておらず、どこか遠くを見るような目で話をする。

「まあ、いずれ知れることだろうから新人の二人にも話しておいた方が良いだろうなぁ」
「日下さんって課長の親戚の子とかそんな感じなんですか?」

 佐々木がそんなセリフを言うと吉富と戸田が交互に相田と顔を見合わせる。そして、妙な顔付きをすると戸田と相田は黙りこむ。

 そんな三人の異様な雰囲気にいよいよ核心に触れるのかと美幸は覚悟を決めて吉富の話を聞こうと拳を握る。

「課長はあの会社の社長の息子でさ」
「ええっ?! 本当なんですか?」

 驚いた佐々木が目を丸くしている。社長の息子が課長の職にいるのが信じられないようで、手に持っていたコップを落としそうになっていた。

「ああ、本当だ。いわゆる御曹司ってヤツだよ。で、あの晴海ちゃんはその御曹司のコレって訳だ」

 そう言いながら吉富は小指を立てる。美幸はやはり会社で公認の二人なのかと、昼間の仕事ぶりを見ていてもそう感じていた。

2020年07月09日

【恋愛小説】好きにならなければ良かったのに29

 あからさまに媚を売る女に幸司が好意を寄せていると思いたくないのに、美幸と相田の目の前を、幸司と晴海が乗る車が通り抜けていく。

「今の課長と日下さんだわ、相変わらずお盛んだこと」

 二人の仲は会社では公認なのかと疑いたくなるし、こんなことが許されるのだろうかと、美幸は怒りより自分がとても惨めな気分になる。

 なのに、もっと二人の情報を知りたいと、

「あの、食事でもどうですか? 会社のことも色々と知りたいし」

 よせば良いのに、どうしても幸司と晴海の関係がどこまでなのか事実を知りたくて相田を食事に誘ってみる。
 すると、相田は大きく頷いて喜んで付き合ってくれた。

 二人が向かったのは会社近くの居酒屋だ。相田はこの店は女だけでも入りやすい雰囲気の店だと教えてくれた。店内へ入ると確かにそこには女性客が目立っていて、カウンター席は男性客より女性客の方が多く占めている。
 店の奥には畳スペースがありそこへ店員に案内されて行くと、そこには、同じ部署の男性社員らの姿があった。

「あれ? みっちゃんと美幸ちゃんじゃないか? 二人だけの歓迎会なのかな?」
「そう言うそちらも三人だけの歓迎会ですか?」

 「みっちゃん」に「美幸ちゃん」と馴れ馴れしい喋りをするのは、新人挨拶の時にもふざけて幸司に嫌味を言われていた吉富隼人だ。
 そして、吉富と一緒にテーブルを囲んでいたのは吉富の後輩の戸田光彦と、美幸と同じ新人の佐々木満だ。

「ねえ、相田さんも大石さんもこっちおいでよ」

 吉富と同様に人懐っこい表情を見せる戸田は、テーブルに座るスペースを作ろうと少し腰を上げで場所を詰める。それに合わせるように新人の佐々木も少しだけ座る場所を移動した。

「ほら、みっちゃんが座らなきゃ美幸ちゃんは座れないよ、ここへ、どうぞ」

 一人でも多くの幸司の部下から情報を得るのには絶好の機会なのかも知れない。しかし、そう思ったものの、普通は大人の男性が上司の悪口を同じ社員の女性に話すのだろうかと疑問に思うと、今回はあまり期待できそうにないと諦めかけた。


2020年07月08日

【恋愛小説】好きにならなければ良かったのに28

 勤務初日が終わると、美幸は一社員として帰宅していく。会社を出ると暗くなった夜空を眺めながら駅に向かって歩く。

 そんな、美幸と同じく帰宅する先輩社員が美幸に声をかける。

「お疲れ、勤務初日はどうだった?」

 美幸に声をかけたのは同じ部署の相田美津だ。とても優しそうな笑顔を向ける相田は、まだ社内では初々しい雰囲気のある人で、美幸は相田には親近感を感じる。

 たぶん、相田の雰囲気がそうさせるのだろう。

「ずいぶん緊張したでしょう? なにせ、あの香川さんの研修だから。私だったら緊張と吐き気で一日が終わりそうだわ」
「緊張と吐き気?! あの香川さんて怖い人なんですか?」
「怖いのは課長かな? 口煩いのは、うーん、香川さんも優しそうであの冷たい目が痛いのよね。あ、でも、一番怖いのは日下さんかな~」

 幸司の恋人の名前が出てくるとやはりビクリと反応してしまう。こんな状態では仕事など出来ない。もう少し強くならなければと、分かってはいるが、やはり、どうしても晴海の存在を気にしてしまう。

「あ、ごめんね、怖がらせるつもりで言ったんじゃないのよ。私って入社以来ドジばかりしてるから日下さんに怒られっぱなしで、あ、えと、こんな情報いらないよね?」

 天然な人なのかまだよく分からないけれど、何となく嫌いになれない雰囲気の人だ。日下晴海の後輩として何年も一緒に働いてきた人ならば、何処まで真実を知っているのか、美幸は簡単に心を許して話せないと思っている。

 それは、この相田に限らず営業部、いや、社内で働く社員全員が美幸にとって心許して話せる相手ではない。入社してそれに気付く美幸は幸司の支えになりたい気持ちだけで入社したことを、勤務初日にして後悔しはじめた。

「その、日下さんって、そんなに怖い人なんですか?」

 本当は夫の恋人など聞きたくないけれど、やはり気になってしまうと、つい訊いてしまう。訊かなければ良いのにと思いながらも・・・

「きっと私が失敗ばかりするからと思うのよ、いつも怒られっぱなしで怒鳴られない日はないかなぁ」

 今日の二人を見る限りは幸司を見つめる晴海の視線は優しくてとても熱くも感じた。けれど、同僚には冷たいのだと分かると晴海の性格を疑いたくなる。


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