2030年06月01日

ようこそ【星屑ひとつ】へ

ゆきのの拙いお話を連日UPしています。
私好みのストーリーやら設定ばかりですが、面白楽しく書いた作品です。多少、いや、かなり突っ込みどころがあるかと思いますが、そこは温かい目で読んで下さいね^^



posted by ゆきの at 00:00| Comment(0) | ■お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月25日

【恋愛小説】あなたとホワイトウェディングを夢みて 140

 いきなり目の前に腰を下ろした郁未に驚いた留美が身体を仰け反らせる。
 すると、にっこり微笑んだ郁未が言う。

「そうだな、ここでは俺が寝るスペースが確保出来ないし、俺がいても邪魔になるだけのようだ」

 だから帰宅するのだと郁未がやっとアパートから出ていくものだと思い込んでしまった留美。ところが、郁未がニヤリと意地悪な高校生のように微笑むと、留美の背に腕を回し抱き寄せ、そのままグイッと持ち上げてしまった。

「専務?!」
「マンションへ帰る」

 マンションへ帰宅するのに、何故お姫様抱っこされるのか意味不明な留美は口を小魚のようにパクパク動かす。

「面白い顔だな」
「は?」

 声にならない留美の顔を見て、フッと笑うと郁未が耳許で囁く。

「俺のマンションへ一緒に帰るぞ」

 郁未の信じられないセリフが続くと、ますます留美はパニックを起こしかける。
 『下ろして』と脚をバタつかせようとすると『落とすぞ』と脅される。すると、ホテルでのあの一件を思い出した留美は、聡の目の前で落とされた時の痛みが頭を過り、急に静まり返っては大人しく抱かれている。

「良い子だ」

 耳許で囁かれる甘い声、誘われるような響きに留美は身体がゾクッとしてしまう。
 最近の郁未は、セクシーな自分の声を自慢したいのか、耳許で何度も囁き惑わせようとする。留美は、他の女同様に従順になるつもりはないと反発したくなるが、それでも、郁未の甘い囁きには抗えない。

2019年11月24日

【恋愛小説】あなたとホワイトウェディングを夢みて 139

「いただきます」

 郁未が淹れてくれた緑茶。急須に茶葉とお湯を入れる、それだけの事だが、常に秘書や家政婦が全ての面倒を見てくれそうな郁未の立場を考えると、今日の事は天地がひっくり返るような出来事の連続なのだろうと、留美は苦笑する。
 折角、郁未が淹れてくれたお茶だからと、留美はゆっくり味わいながら飲んでいく。

「どうだ?」

 留美の反応を興味津々な瞳で見ている郁未。

「美味しいわ」

 今度は程よい濃さでまろやかな緑茶だ。口元が緩み微かに微笑む留美を見て、郁未はホッとしている。
 一口、二口と留美が湯呑みを口へ運ぶが、緑茶を殆ど残したまま湯呑みをテーブルへ戻す。そして、小さな溜め息を吐くと寝室がある方に目を向けた。
 郁未はその様子を見ると襖の方へと寄って行く。

「休むか?」

 襖を開けながら郁未が訊く。
 留美はベッドに横になりたいものの、会社では上司に当たる専務の郁未が居ては、休まるものも休まらない。
 寝具と言えば、寝室にあるベッドが一つだけ。前回と違って郁未と留美の立場が逆転している状態で一人だけベッドに入れない。

「あの、大丈夫ですから。専務は早く着替えたいでしょうから、もう自宅へ戻られた方が良くないですか?」

 今すぐ帰れとは言えないが、それとなく帰宅を促す留美だった。けれど、ベッドを眺めていた郁未が『そうだな』と呟くと開けた襖を閉じて留美の前にしゃがみ込む。

2019年11月23日

【恋愛小説】あなたとホワイトウェディングを夢みて 138

「茶だ」

 湯呑みを二つ掴んで運んできた郁未のお茶はとても美味しそうな緑茶。留美の目の前のテーブルに置いた湯呑みは鮮やかな緑色だ。だが、茶葉が多すぎたのかかなり濃いめのお茶に留美は湯呑みを取る手が止まる。

「どうした? 飲まないのか?」

 自分の湯呑みを口に運んだ郁未だが、一口ゴクンと飲んだ後、湯呑みを暫くジッと眺めていた。

「……」

 郁未はテーブルに置いた留美の湯呑みを手に取り、『淹れ直す』と言って台所へと行ってしまった。
 郁未にとっては生まれて初めて緑茶を淹れる経験をしたのだろうと、クスッと笑って留美が郁未にアドバイスをする。

「湯呑みの緑茶を半分に減らして、それにお湯を足せば丁度良いと思うわ」

 茶の間から聞こえてきた留美のアドバイス。
 郁未が振り返ると、にっこり微笑む留美が郁未を見ている。屈託なく優しそうな笑顔に郁未は耳朶まで赤く染まる。

「それくらい俺にも分かっているさ」

 流し台の上に湯呑みを置いた郁未は、急須の蓋を開けて中の茶葉を確認した。急須の半分くらい茶葉が占めているのを見て、これは多すぎたのだと反省する。
 そして留美のアドバイス通りに湯呑の緑茶を薄めた郁未は、流し台の横の方にトレーが置いてあるのに気付き、今度はそのトレーで湯呑みを運んでいく。

「美味しそうなお茶だぞ」

 そう言って、自分の湯呑みを手に取るとトレー毎テーブルの上へ置いた。
 確かに郁未の言葉通り、とても美味しそうな鮮やかな緑茶が出来上がっていた。

2019年11月22日

【恋愛小説】あなたとホワイトウェディングを夢みて 137


 留美のジャージ姿が異様にも似合っていると、郁未は留美から視線が外せない。しかし、今日の留美は病人で介抱が必要でベッドの相手ではない。

「顔色がまだ良くない」
「寝ていたら治りますから。薬も貰っているので」

 ペコッと頭を下げると、留美は台所へ行く。
 覚束ない足取りで台所に立とうとする留美のそばへ駆け寄った郁未が、後ろから留美の両肩を掴み支える。

「大人しく寝ているんだ。ここは俺がやるから」
「専務に迷惑はかけられないわ。お茶でも」

 食器乾燥機に伏せて置いていた急須を取り出そうとした留美の手を掴み、急須から手を離させた。

「茶なら俺が淹れる。兎に角、大人しくしてくれ」

 世話しなければならない相手に世話をして貰っては、郁未は何の為にここにいるのか。自分が不甲斐ない男だと思われたくなく、掴んだ留美の肩を押しながら茶の間の方へと連れて行く。
 そして、テーブルの前までやって来ると留美の肩を押して座らせる。

「茶は俺が運んでくる。ここで待ってろ」

 とは言うものの、他人の家の勝手など分からないだろうし、そもそも自宅や会社で自分が飲むお茶を淹れた経験があるのだろうかと、留美は困惑しながらも郁未の優しさに頬が緩む。
 そして、留美が台所を眺めていると、慣れない手付きで茶筒から茶葉を急須へ入れる必死な顔した郁未が面白くて、ついついずっと眺めていた。

2019年11月21日

【恋愛小説】あなたとホワイトウェディングを夢みて 136

 タクシーを拾って留美と一緒にアパートへ戻ってきた郁未。倒れた留美を一人残して帰れずに、留美の肩を支えながら部屋へ入って行く。

「大丈夫なのか?」
「一応薬飲んだから……」

 強情にも強気の姿勢を崩さない留美だが、今回ばかりはそうは問屋が卸さない。強情だけでは気分は改善しないし、よろめく身体を自ら支えることも出来ない。

「さあ、君はもう寝た方がいい。今夜は俺が介抱するから君は安心して眠ってくれ」
「ええっ?」

 この前のお返しと言う郁未は、今回は自分が留美を世話すると言い張り頑として譲らない。
 パーティ用のスーツで一晩を過ごそうと言うのか、留美は郁未と二人だけの夜を過す事に戸惑う。

「けど、あの、洋服はどうするの?」

 郁未の寝間着を心配し質問したつもりだった。
 なのに何を誤解したのか、郁未が留美の背後に回りドレスのファスナーに手をかける。

「ちょ……なに?」
「着替えたいんだろう? 手伝うから安心しろ」
「じ、自分で出来ます!」

 『遠慮するな』と郁未が嬉しそうにファスナーを下ろしにかかる。とんでもないと留美はドレスの胸元を両手で握りしめ、『遠慮するわ』と叫んで洗面所へと駆け込んでいく。
 そして、乾燥機付き洗濯機で洗濯を終えていた、留美のトレードマークになりつつある例のジャージを取り出し、急いで着替えを済ませる。
 着替えを終えた留美はドレスを抱きかかえながら茶の前へ戻ると、恍惚とした表情の郁未が留美を見つめていた。

ラベルリスト